一定額の医療費を支払った場合に納めた税金の一部が戻ってくる
又は、これから納める税金が安くなる控除制度
「医療費控除」
1年間の医療費が10万円を超えなければ所得税の還付申告が受けられないと思っていませんか?
10万円を超えた医療費が対象になるは、総所得が200万円以上の人ですよ。
では、総所得が200万円未満の人の場合は?
✅10万円の代わりに総所得の5%の額以上の医療費が「医療費控除」の対象となります。
その他に
✅生計が一緒であれば別居の家族の医療費もまとめて申告可能
✅さらに、確定申告開始日(2月16日)を待たずに、年明け直ぐ(税務署の仕事始め日)から還付申告できます。
✅管轄の税務署へ郵送でも大丈夫!
以上のこと知っていますか?


「医療費控除」は10万円を超えた金額が戻ってくるの?
医療費控除を受けるためには、会社員であっても個人自営業者であっても確定申告をする必要があります。
勤め先に年末調整を任せっきりな給与所得者は、確定申告手続き自体慣れないものです。
しかし、一定額の医療費を年間で支払った場合は、医療費控除を申告することで所得税の払い過ぎを防ぎます。
また次年の住民税を決定する判断材料になる訳ですから、面倒がらず確定申告したいですね。
個人自営業者は、毎年のように確定申告します。他の控除と合わせて医療費控除があれば、忘れずに行いましょう。
そもそも、医療費控除とはどのような仕組みなのでしょう?
いつどのように手続きすれば良いのでしょう?
「医療費控除」は10万円以上支払った医療費(お金)が返ってくるのでしょうか?
医療費控除は、支払った医療費の額がそのまま戻ってくる → 訳ではありません!
支払った医療費の額から10万円超えた金額が全て戻ってくると勘違いしている方、見受けられます。
”支払った医療費に応じて税金を計算し直す”
というものです。
つまり・・・
✅会社員の場合は、医療費控除の申告によって源泉徴収された(毎月の給料から天引きされていた)所得税の見直しがされ
税金の還付(戻る)が受けられる
✅個人事業主の場合は、医療費控除を確定申告に反映できるので、戻ってくるというよりは
納める所得税を安くできる節税効果が見込める
という仕組み。
節税効果ですから、所得税のほかに次年の住民税も安くなります。
支払った医療費に応じて医療費控除の手続きをすることで
所得税と住民税、この2つの税金負担がかなり違ってきます。
では、先ほどから何度も出ている「支払った医療費に応じて」・・とはどういうことなのでしょう。
医療費控除の対象になる金額は、支払った医療費から保険金(入院給付金、他)などで補填された額と10万円を引いた額です。
但し、その控除上限は200万円までとなります。
そして、総所得が200万円に満たない人の場合は、10万円の代わりに総所得の5%を引いた額となります。
ここ、知らない方が多いです。
周りの皆が「10万円以上の医療費」と話しているのを聞いているからなのでしょうか。
200万円に満たない低所得者やパート主婦、時に売上げが伸び悩んだ個人事業主さんなど該当する場合がありますね。
では、総所得の5%とは、どんな人が対象になるのか、また、5%とはどのくらいの金額なのか、例題を出して解説してみましょう。
●例その1
月給20万円のOLサクラさん→年収は240万円
▶サクラさんの所得を給与所得者の所得算出式にあてはめると
▶年収240万円×70%-18万円=150万円
▶ほかに収入がないので150万円が総所得です。
▶よって、医療費控除は→総所得が200万円以下の場合、総所得の5%に該当するでしたね。
▶150万円×5%=75,000円
つまり、サクラさんの医療費控除の対象となる金額は
▼
▼
支払った医療費から保険金(入院給付金、他)などで補填された額と75,000円を引いた額です。
●例その2
売上300万円、仕入れ・経費120万円の個人事業主モモコさん
▶モモコさんの所得は事業所得になりますから計算式は以下です。
▶売上300万円ー仕入れ・経費120万円=180万円
▶モモコさんも、ほかに収入がないので180万円が総所得です。
▶よって、医療費控除は→総所得が200万円以下の場合、総所得の5%に該当するでしたね。
▶180万円×5%=90,000円
つまり、モモコさんの医療費控除の対象になる金額は
▼
▼
支払った医療費から保険金(入院給付金、他)などで補填された額と90,000円を引いた額です。
*保険金で補填される額とは、生命保険から支払われる入院給付金、手術給付金のほかに、健康保険で支払われる高額医療費や出産育児一時金などが含まれます。→ここも注意です!!
「医療費控除」は10万円以上でも以下でも家族分まとめて申告できる
医療費控除は、確定申告をする年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が対象です。
生計が一緒であれば家族分まとめて申告することができます。
家族の中で一番所得が多い人が家族分まとめて医療費控除を申告すれば、世帯の税金負担総額を減らせます。
その場合、家族の中で一番所得が多い人の総所得が200万円以上であれば、支払った医療費が家族分まとめて10万円になれば対象です。
●なぜ家族分をまとめる?
所得税は累進課税方式です。
つまり、所得額に合わせて税率(5%~45%)による所得税が計算されるからです。
所得が一番多い(所得税率が高い)夫が確定申告で医療費控除を受けると、還付率も高いという理屈になります。
勿論、夫ではなく妻が家族分の医療費控除を申告するのも有りですよ!
例えば、
✅夫が給与所得者で、その年の給与所得金額が500万円だった場合、夫の所得税率は20%。
夫が家族分をまとめて申告すれば、医療費控除額の20%が還付される(戻ってくる)ことになります。
✅妻はパート収入と内職合わせて総所得が210万円だった場合、妻の所得税率は10%。
妻が家族分をまとめて申告した場合は、医療費控除額の10%が還付される(戻ってくる)ことになります。
仮に、家族で1年間に支払った医療費から保険金(入院給付金、他)などで補填された額と10万円を引いた残りの医療費控除額が15万円であった場合
夫がまとめて申告する
▶15万円×20%=3万円の所得税が還付
妻がまとめて申告する
▶15万円×10%=1万5千円の所得税が還付
どうでしょうか、以上のケースでは、夫がまとめて申告をした方が還付金が多いのはお分かりいただけますか。
*妻が200万円未満の所得であれば一概に夫の申告が有利とは言えない場合もある。
以上と同じ条件の場合、住民税は10%と一律です。
夫が申告でも妻が申告でも、15万円×10%=1万5千円 安くなります。
●生計が一緒とは?
必ずしも同居という条件はありません。
・ひとり暮らしをしている学生の子供
・単身赴任中の夫
の医療費も、控除対象としてまとめることができます。家族が多いと、医療費も結構な金額になりますよね。
但し、病院で支払った全ての金額が対象ではありませんので、特に別居の場合は何の医療行為なのかを聞いておく必要があります。
医療費控除の対象になるかならないかの判断基準があります。
「治療を目的とした医療費」→ 対象
「予防を目的とした医療費」→ 非対象
と、覚えましょう!!
●医療費控除の対象になる医療行為とは?
以下の「治療を目的とした医療費」です
・病院での診察費、治療費、入院費
・出産の為の入院や健診、検査代
・不妊治療費
・医師の処方箋をもとに購入した医薬品
・薬局で購入する薬も対象の場合有り
・通院に必要な交通費
・歯の治療費(保険適用外も含む)
・子供の歯列矯正費用
・治療目的のリハビリやマッサージ費用
・介護保険の対象となる介護費用
●医療費控除の対象にならないものとは?
以下の「予防を目的とした医療費」です
・人間ドックなどの健康診断費用
・予防注射の費用
・美容整形の治療費用
・漢方薬やビタミン剤の費用
・マイカー通院のガソリン代や駐車料金
・里帰り出産のための実家への交通費
・自分の都合で利用した差額ベッド代
・大人の歯列矯正費用
*歯列矯正費用は子供は対象ですが、大人は美容という考えから非対象です。



10万円超えの「医療費控除」の手続きは面倒?
確定申告は慣れていない会社員にとっては、ハードルが高く面倒な作業。
年間10万円以上の医療費を支払ったとしても、差引した医療費控除額がよっぽど高額でなければ、手続きを放置される方が多いようです。
過去に忘れていた医療費控除の申告が可能です。
書類が揃えば、5年前の分まで遡って申告できますよ。
5年分の還付申告は最寄りの税務署に相談をお勧めします。
医療費控除の申告は、今では以前に比べると提出書類が少なくなりました。
とは言っても、毎年混んでいる税務署に並ぶのは疲れますよね。
しかし、年末調整ではなかなか知ることができない、ご自分や世帯の税金額を確認できる良い機会でもあります。
では、以前と変わった医療費控除手続きとは?
平成29年分の確定申告から医療費控除を受ける場合
「医療費控除の明細書」を提出することにより「医療費の領収書」の提出や提示は不要となりました。
「医療費の領収書」等に記載された次の事項を記載します。
・医療を受けた者の氏名
・病院・薬局など支払先の名称
・医療費の区分
・支払った医療費の金額
・生命保険や社会保険(健康保険・介護保険)などで補填される金額
*平成31年分の確定申告までは、今まで通り「医療費の明細書」の提示に代えて、医療費の領収書の提出又は提示の措置があります。
どちらか申告しやすい方で確定申告致しましょう。
また、領収書に代わって加入の健康保険組合から届く「医療費通知」(医療費のお知らせなど)を提出することにより、「医療控除の明細書」が簡単に作成できます。
しかし、確定申告書類提出までに「医療費通知」が届かないという声が、多く聞こえました。
ん・・・なので、医療費の領収書は捨てずに様子を見た方が良いですね。
詳しくは国税庁HP参照
↓
No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
でも、なんだか、難しいーーーっ(@_@)(@_@)と感じている方は、早めに税務署へ相談に行きましょう。
税務署職員さんが優しく答えてくれます。
あわせて確定申告の時期は電話相談窓口が拡大されます。
税務署職員さん(それに準ずる人?)が丁寧に教えて下さいますので、医療費控除以外の申告についても質問できます。
年末調整を終えた給与所得者が確定申告で控除を受ける場合、だいたいは還付金が発生します。
還付金(所得税が戻ってくる)がある場合は、確定申告期間(2月16日~)を待たずに提出可能です!
これは是非使いたい。
税務署に問合せをしたところ、新年の仕事始めから受け付けているそうです。
しかも郵送でも可能なんですよ。
ということは、還付金の受取り(振込み)も早いってこと(*^^)v
益々、嬉しい!ちゃっちゃっとやってしまいたいですね。
個人事業主さんも、医療費控除があってもなくても、還付金があってもなくても
確定申告をちゃっちゃっとやって税金を納め、新年のスタートを早く切りましょう。

子供たちが独立し生計が別となった家庭では、健康を意識し運動を始めた。
また食事にも気をつかい、サプリメントなどを愛用したところ、医療費控除の対象となる治療が減ったというご夫婦も多いはず。
しかし、そんな方でもドラックストアにて鎮痛剤や湿布薬、栄養ドリンクなどを購入する事があるのではないでしょうか。
健康の維持増進、及び予防への取り組みを行う個人が購入した医薬品(要指導医療品及び医療用から転用された医薬品)について所得控除を受けることができる
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
をご存知ですか?
自分の健康を自分で守っている方が使える節税制度ですね。2017年から始まっています。
記事書いてます → セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
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