No.003
扶養を外れると何が変わるの?
「お金美人塾。-Membership-」
「扶養の範囲内で起業をしたいのですが、いくらまで稼げますか?」「扶養範囲を超えないように所得を抑えたいのですが、何とかなりませんか?」など、筆者がひとり起業を志す女性から相談される際に良く耳にする質問です。
何故、このような疑問を持つ女性が多いのでしょうか? 現在サラリーマンの夫に扶養されている妻は、扶養のメリットのひとつである社会保険料を負担していません。(0円で社会保険に加入している)一定の所得以下であれば、所得税や住民税の納税義務もありません。 夫の扶養から外れれば、社会保険料や税金の負担が増える。その認識だけはお持ちのようです。
それって損なのでは?というイメージを持っている女性が多いのも事実です。

この章では、妻が扶養から外れると何がどのように変わるのか?の解説をいたします。 参考になれば幸いです。
この記事の目次
収入を得ることは 経済的自立の一歩
起業(開業)は、経済的自立の一歩です。
「自分の足で立つ収入を得る覚悟や意思がある!」が、世間からの見られ方です。 仕事を持てば、誰にでも税金や社会保険料の負担が生じます。お勤めしていた方は当時のことを思い出してください。収入によって決まる税金や社会保険料が皆さんのお給料から自動的に引かれていたのです。
主婦の起業(開業)も立派な仕事です。国民の義務を果たす一員になるのです。そのことを前提に考えれば、扶養から外れて起業すること自体が、必ずしも損ではないと理解していただきたいです。 また、経済的自立を叶えることで、豊かさと自由な時間を手に入れれるなど、他にも女性ならではのメリットがたくさんあると筆者は考えます。
扶養から外れない働き方、外れる働き方の選択は人それぞれです。メリット・デメリットの感じ方も家庭によって異なります。
「扶養基準や制度」を良く知り、ライフプランにあった自分だけの事業計画を練ることも、起業準備で必要なことの一つですね。 では、次に扶養から外れた場合の負担について説明しましょう。
税金と社会保険料の負担がある
妻がサラリーマンの夫の扶養から外れることで増える家庭の負担は、大きく分けて「税金負担」と「社会保険料負担」です。
- 「税金負担」→ 税制上の扶養
- 「社会保険料負担」→ 社会保険上の扶養
なぜ、家庭の負担と前置きしたかというと、A. B.の両者の負担者はそれぞれ夫と妻に分かれるからです。 それぞれ夫と妻に分かれるとは以下です。
- 税制上の扶養→夫の税金が変わる
- 社会保険上の扶養→妻の保険料が変わる
「扶養から外れたくない」とは、A.とB.のどちらか一方または両方を指すのですが、A.とB.のそれぞれの条件が違うことはあまり知られていません。 どちらを意識すのかによって、妻自身の稼ぎ(所得)がいくらまで可能なのかが異なるのです。 では、両者を解説していきましょう。
A.税制上の扶養→夫の税金が変わる
税制上の扶養とは、国税庁が決める基準です。 所得が無い、あるいは所得が少ない配偶者(ここでは妻)を持つ納税者(ここでは夫)の税金負担を減らす制度で、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の二つがあります。夫の年末調整でよく目にする言葉ですね。
「配偶者控除」
「配偶者特別控除」
妻の1年間の合計所得が48万円超133万円までの場合、夫に「配偶者特別控除」が適用され、夫が段階的に減少していく所得控除を受けられる。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係は該当しません)
- 控除を受ける納税者と生計を一にしていること
- 青色申告の事業従事者として給与の支払いを受けていないこと。または白色申告の事業従事者でないこと。(つまり夫の事業の従業員になっていないことを意味します)

B.社会保険上の扶養→妻の保険料が変わる
社会保険上の扶養でいると、妻の健康保険料と年金保険料の支払いが免除されています。(夫の会社が負担をしている) 妻の起業(開業)による稼ぎが、夫が加入する健康保険の規定による収入や所得を超えた場合、妻は夫の健康保険から抜けることになります。
夫が加入する健康保険の規定は、妻の所得が130万円までOKとしていたり、収入を130万円とすると決めていたり、個人事業主になったというだけでNGだったりと様々です。(*所得と収入は違います) 所得が130万円までOKであっても、その所得を算出する経費に制限をつけている規定もあります(例えば、水道光熱費や消耗品費を経費として認めない等、その結果所得が増えます)
夫が加入する健康保険の規定は、様々ですね。 大企業でない限りWEB上などで「扶養規定」の開示がされていません。夫に聞いてもらう。妻自身が担当者に問い合わせる。夫が健康保険に加入した際に受け取っている健康保険組合のしおりなどを読む(とってある方はですが)などの方法で規定の確認が必要です。
参考までに
大きく3つの健康保険に分かれます。
- 組合健保・・・企業が単独、あるいは共同で設立している健康保険です。
- 協会健保・・・組合健保を設立しない企業のサラリーマンを対象とした健康保険で「船員保険」も運営しています。
- 各種共済組合・・・国家公務員が加入する「国家公務員共済組合」、地方公務員が加入する「地方公務員共済組合」、私立学校の教職員が加入する「私立学校職員共済」があります。
では、妻が夫の社会保険上の扶養から抜けるとどうなるのでしょう?

妻が加入する社会保険
妻がひとり起業(個人事業主)であるなら、加入する健康保険は、妻が住む自治体が窓口となる国民健康保険と国民年金になります。
■ 国民健康保険料の算出基準や早見表が各自治体のホームページに掲載されています。
ご自身で確認しましょう。どのぐらい稼いだなら扶養から外れても納得のいく負担額なのか、ご自身で調べることも重要です。(満40歳になると介護保険料負担も加算されます)
■ 国民年金保険料は全国一律です。
令和2年4月〜令和3年3月までの国民年金保険料は、月額 16,540円です(国民保険料は毎年改定されます)
メモ
パートと事業をかけもちの場合、パート先で健康保険(組合健保や協会健保)と厚生年金の加入を検討するのも良いですね。給与所得者の保険は、労使折半と言って保険料の半分をパート先が負担してくれます。但し、シフト数が増える可能性はあります。相談してみましょう。
夫の会社の規定もある
最近はごく稀にはなってきていますが、会社ごとに設けられた基準もあります。家族手当、住宅補助、社宅支給、など。これらは夫に扶養家族がいるからこそ給料とは別に支給される福利厚生です。
女性(妻)の起業(開業)で、扶養から外れる選択を視野に入れているのであれば、夫に内緒にしない、は言うまでもありませんね。 加えて、福利厚生の資格を失う可能性があることを夫の会社へ確認したり、夫と話し合いを重ねることは必須ですね。
妻も納税者になる
妻が夫の扶養から外れるくらい稼ぐと、妻自身が納税者になります。 納税義務の所得額(以下に記載)は、社会保険上の扶養基準の所得額より少ないため、社会保険上の扶養から外れれば自ずと納税対象になるのです。
- 所得が48万円を超えると「所得税」の対象
- 所得が43万円を超えると「住民税」の対象
上記の所得を超えると誰しもが納税者になります。 また妻が納税者になることは、夫の税金上の扶養基準とは別です。
夫は夫、妻は妻と理解しましょう。 妻に収入がなく、夫の扶養内でいれば「所得税」と「住民税」は非課税でした。つまり納税してない(0円)そう考えると、納税者になることは社会保険上の扶養から外れ社会保険料を負担すること同様、損した気分になるのかもしれませんね。 何度もお伝えしていますが、「稼ぐとは自分の足で立つ」ということ。
たとえ個人事業主(ひとり起業)でも、起業(開業)するということは「経営者になる」ということでもあります。 相互扶助の考えに基づく「国民皆保険」に誰しもがお世話になります。税金で成り立つ各自治体のサービスも当たり前のように利用しています。社会貢献が存分にできる経営者になりたいと筆者は思います。
扶養を外れると何が変わるの?
まとめます。
- 夫に扶養される基準には「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」がある。 「税制上の扶養」は夫の税金負担を変え、「社会保険上の扶養」は妻の社会保険料負担を変える。
- サラリーマンの夫が加入する健康保険に妻の扶養基準があり、確認をする必要があること。
- 妻は「国民皆保険」の法律に基づき国民健康保険と国民年金に加入しなくてはならない。
- 妻自身が納税者になることでもある。
個人事業主は、自身の収入を自分で決めれる醍醐味があります。
女性でも、家庭を支える母でも、いつでもどこでも好きなこと得意なことで起業(開業)ができる世の中になりました。
会社に雇われることで生じる時間的拘束もなければ、定年制度もありません(自由という責任はありますが)

と筆者は願います。
以上となります。
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